マンション駐車場の権利
現代では車は一家に一台どころか親子がそれぞれマイカーを持つ時代です。一戸建て住宅では二台駐車がかなり普及してきています。しかし、マンションでは住戸数と同数の駐車場を備えてあるところはほとんどありません。逆にそのような物件があれば、「お買い得」と言えるかもしれません。
なぜこのような事態が生じたのでしょうか。マンションは限られた敷地内に建てるため、できるだけ販売戸数を増やそうとします。つまり十分な駐車スペースを確保できなくなるわけです。また、自治体の条例がまだまだ甘く、付置義務が徹底されていないことも理由の一つと言えます。例えば、東京都では総戸数の3割、最も厳しい地区でも神奈川県横須賀市の一戸に一台となっています。
ところで、マンションの駐車場の問題は、車を持っていない人にも関わってくることになります。なぜなら専有部分である居室以外の部分は、原則的に共用部分であるからです。
駐車場は共用部分であるわけですから、そこにかかる固定資産税は全戸の住民で払わなければなりません。もしこの部分で何らかのトラブルが発生した場合、管理組合で議論になり紛糾したりすれば、車を持っていない住民でも無縁とは言えなくなります。共用部分に関する問題は、「みんなで考える」というのがマンション住民の鉄則だからです。
このように駐車場は、入居後にマンション内でしばしば問題となることを留意しておいてください。
戸数より駐車場の台数が少ない場合は、抽選で使用者を決定し、使用料を支払う方法しかありません。
しかし、販売会社が高額物件の購入者などに駐車場の使用に関して優先権を設定してしまう「優先使用権」と呼ばれる特異で悪質な「利権」が付いている場合があります。一階に店舗が入っている場合などに店の車を優先的に使用させているケースもあります。一般の区分所有者は順番待ちをしているのに、いったん優先権を得た住民はその権利を決して手放しません。しかも無償で使用できることを規約に用いたりしている販売会社もあるのです。
これでは同じマンションに住む住民として、大きな不平等感が生まれますし、管理組合の運営にも支障をきたす原因にもなります。
さらにこれよりひどいケースが「専用使用権」と呼ばれるもので、半永久的に駐車場を使用できる権利を、販売会社が売ってしまったものです。この権利を有する住民は、引越しの際に高額で売却したり、他人に貸して高い使用料を得たりすることができます。しかもほとんどの場合、この権利を持っていると、駐車場の補修費を支払う義務がありません。補修費は駐車場の土地の所有者が支払うべきものだからです。つまり、「専用使用権」の持ち主は、駐車場の独占使用者でありながらその補修費は他人が払ってくれるのです。
このような「おいしい」権利が一人歩きして、トラブルがたびたび発生したことも事実です。さすがに新築マンションではほとんど見られなくなりましたが、中古物件ではまだ存在していることもあるので注意してください。
そもそもなぜこのようなことが起きたのかといえば、販売会社が住戸の価格を引き下げるために専用使用権を販売したのが始まりです。
マンションではいつのまにか知らないうちに他人のためにお金を払っていた、というケースがありますが、これが露見すれば大騒ぎになってしまうのが通例となっています。
販売会社のなかには、住戸と同じく、駐車場も分譲販売してしまうケースもあります。駐車場も専有部分として登記するのです。
しかし、これは屋内駐車場の場合、トラブルのもとになります。将来の大規模修繕費がどこからも出ないのです。たいてい、屋内駐車場は管理費のみで修繕積立金は徴収しません。しかし、将来必ず大規模修繕はしなくてはならなくなりますから、結局駐車場を持たない人たちからの積立金で補填することになります。これも「他人のために自分のお金が使われる」典型的なケースと言えます。
また積層型の立体駐車場の場合も注意が必要です。駐車場の用地は共用部分であることは大前提ですが、管理会社に住民が用地を無料貸与し、立体駐車場を建てることがあります。管理会社はリース会社に立体駐車場を納入させ、リース料よりも高額な使用料を設定し、差額を懐にせしめるといった「錬金術」を使っていることがあります。土地も設備も他人のものでありながら、マンションが存在する以上、何もしなくとも永久にお金が入ってくることになります。
このほか等価交換方式のマンションで、駐車場が元の地主名義になっているままだと、使用料の全額が管理組合ではなく、地主に転がり込んでしまうケースもあります。
このようにマンションの駐車場には多くのトラブルがあります。「使用権」「分譲」「立体駐車場」「等価交換」などの言葉が出てきたらくれぐれも注意が必要です。