デザイナーズマンション
建物の善し悪しは設計で決まるというのも過言ではなく、設計者は全く白紙の状態から建築物を創造し、工事が始まれば施工者を監理し、最終的に施主に引き渡すまで一貫して責任を持っています。
日本のマンションは、おおむね①ゼネコン設計部 ②住宅メーカーの設計部 ③設計事務所 の三者が設計しています。公団物件などでは、役人建築家も挙げられますが、民間設計事務所とのタイアップがほとんどとなっています。
では、以上の三者にはどのような違いがあるのでしょうか。
まず①のゼネコンとは、大規模物件を得意とする企業代で、設計から施工まで一貫して請け負うのが特色です。ゼネコンの多くは、建物各部分の標準的な作り方を「部分品質表」と呼ばれるもので統一しています。外装部分から内装部分まで、あらかじめ実に数百ものスタンダードを用意しており、品質を確保しています。そのため、例えばゼネコンの設計施工によるマンションで雨漏りなどの不具合はまずありません。技術的にも世界のトップレベルと言えるでしょう。
このことは②の住宅メーカーでも同様と言えますが、もともと建売り住宅に主力を置く組織のため、どちらかといえば外観よりインテリアに重点を置く傾向があるようです。
結局、ゼネコンと住宅メーカーは、どちらも設計施工による物件が多いため、マンション造りにはさほど違いはないと言えるでしょう。
③の設計事務所には、大きく分けて組織設計事務所とアトリエ事務所があります。前者は大規模事務所ですので、見掛けはゼネコン設計部と似ていますが、設計だけを売りにしている訳ですから設計技術はさらに洗練されていると言えます。
アトリエ事務所は、数人から数十人の小規模設計事務所ですが、ここではさらにデザインのオリジナリティーを追及し、設計のカラーを強く打ち出しているのが特徴です。いわゆる「建築家」とは、アトリエ事務所を指すと思ってよいでしょう。
これまで建築家がマンション設計を手掛けることが少なかった理由として、建築家にとって「芸術作品」である建物が販売会社にとっては「商品」であり、販売会社とのこういった意見の相違があったからだと思われます。
販売会社にとって「商品」であるマンションはリスクをともなう冒険はできません。何より安全重視の無難なデザインと適切なコストが求められます。
ところが建築家にとって「芸術作品」ともなれば、コストや安全、利便性よりも空間の芸術性が重んじられます。このことは住民がその芸術性を許容、あるいは信望しなければなりませんから多くの人が住むマンションでは実現が難しかったわけです。
しかし、日本のマンションはあまりにも画一的、均一的であったことも事実で、ゼネコンや住宅メーカーの物件も無難なデザインであることは否定できません。
そこで、バブル期を契機に、マンション建築に外国人建築家を登用するケースが増えてきました。さらに日本人建築家も販売会社との妥協点を見出しつつ、マンション建築の可能性を追求し始めました。また販売会社も「何かプラスアルファがなれれば売れない」という事態に陥り、機能や性能を確保しつつも個性的なデザインを取り入れようとしました。
このような経緯から「デザイナーズ物件」を購入しようとする際は、その物件の性能に目を向けるのが失敗を避けるポイントになります。
屋上の防水、ベランダの手摺、上下左右の壁の遮音、冷暖房設備、大規模修繕のコストなどが主なチェックポイントとして挙げられます。
建築家とは「これまでにない空間を創造する」ことを使命としていますから、雨漏りや遮音、冷暖房などのリスクが多少高まることは覚悟しなければなりません。個性的な「芸術作品」のなかに住むこととなりわけですから、個性的な住み手が要求されるのも当然のことになります。
しかし、作り手と住み手のマッチングがうまくいったとき、全く新しいライフスタイルが生まれ、充実した生活を送れる可能性も大きくなるでしょう。