借地権マンション
このところいわゆる「借地マンション」と呼ばれる定期借地権方式の分譲マンションが急増しています。
これはディベロッパーなどが地主から土地を借りてマンションを建て、一定期間(たいてい50年)が過ぎたときに建物を解体し、更地にして地主に返す方式です。なぜこのような手法が登場してきたのかといえば、マンションの熾烈な販売合戦により、販売側の「何が何でも売る」という意気込みのあらわれでしょう。とうとう「借地でマンションを建てられないか」といった発想にたどり着いたのです。
マンション開発にあたって、まとまった土地代が不要になりますから、その分当然価格も下げられるわけで、同じ専有面積でも約三割から四割も安くなります。
ある県では定期借地権方式で建てられたマンションは、3LDK(87平米)で4100万円台と、土地所有権マンションに比べて約500~700万円ほど安くなっています。ちなみにこの物件は、最低価格の2800万円(66平米)から7700万円(122平米)まですべてが即日完売したそうです。
この物件は、県の開発地域に属しており、県は住宅を安くつくるために30年間の期限付きで土地を貸し出したのです。30年というと短いのでは、と思われるかもしれません。しかし最初の30年が経過した時点で、次の30年に契約更新されることになっていますから、理論上は建物がある限り永久に住み続けられるというわけです。さらに地主が自治体であることから信頼度が増したのでしょう。
今まで日本人は、自分の土地を所有することにやっきになってきましたが、これは日本の土地神話が崩壊した証といえるのではないでしょうか。 そして地価の暴落や震災の教訓が「借地のマンション」を普及させる原動力となったようです。
さらにマンションの資産価値が下がり続けていることも「借地マンション」人気の理由の一つです。どうせ売るときは二束三文になってしまうのだから、最初に安く買っておいたほうがよいという判断です。マンションを「仮説建築」としてとらえているのでしょう。
このように見てくると、子供の代まで自分のマンションに住まわせる意思がないならば、定期借地権方式のマンションは絶好の条件に見えるかもしれませんが、思わぬ問題点もあるのです。
マンションは定期的なメンテナンスが必要です。特に大規模修繕ともなると住民の負担も相当なものです。例えば、あと数年で取り壊しが決まっているマンションに多額のメンテナンス費や修繕費を出す住民がいるでしょうか。しかし、補修をしなければたちまち建物は使い物にならなくなり、住民は出ていきスラム化が生じてしまいます。これから30年後に世の中がどうなっているかなど誰にもわかるものではありません。地主が民間企業であればなおさらのことです。
こうして考えてみると賃貸マンションのほうが有利にさえ思えてくるかもしれません。
建物とは商品である前に「生き物」であるということが、借地マンションの登場で再認識されることとなりました。そしてわれわれ住民は、生涯を通じてその生き物と共存していかなければならないのです。