分譲マンション リフォーム

 マンションのリフォームは、極めて限られたことしかできないと言われていますが、まず「できないこと」を見極めることが肝要です。
 分譲マンション特有の権利関係を定めた「区分所有法」をベースにして、管理組合の「管理規約」や「使用細則」が決められています。この「規約」や「細則」は法律と同等の効力があるため、いかなるマンション住民もこの規則を守らなければなりません。
 リフォームは以下の法律、規則によって制限されます。
 ハード面・・・建築基準法・自治体条例
 ソフト面・・・区分所有法・管理規約・使用細則
 どのようなリフォームが制限されているのか実際の管理組合細則の項目をあげてみます。
 ①専有部分の増築(出窓を含む)
 ②建築の主要構造(耐震壁・柱・梁・スラブ・屋根・階段・バルコニー・庇)に影響を及ぼす穿孔(せんこう)、切り欠き等の行為
 出窓の新設は「窓くらい」と考えがちですが、主要構造に触れることは建物にとって命取りになりますから絶対に不可なのです。
 また設備機器の大幅な位置変更も制限されています。設備機器は常に建物の縦シャフトと密接に関係していますので、例えば給排水のためのPSは電気供給のMBを無視してレイアウトできないのです。リフォームの範囲内で言えば、せいぜい洗面台の向きや流しの位置を変えることくらいでしょう。
 さて、リフォームの希望で最も多いのは「和室と居間の壁を取り払って一体化したい」というものです。現在のマンションは、高く売るために小割りした部屋の数をできるだけ増やす傾向にあるため、使用価値の低い和室ができてしまうことはよくあります。これを一体化すると、驚くほど広いリビング空間が生まれるわけです。
 この際の注意点をあげておきます。
 ①改装工事は床だけでなく、壁や天井も一新すること
 ②間仕切り壁が耐震壁(コンクリート壁)の場合は不可であること
 ③仕上げ(クロス・ペンキ)の下地、特に断熱工事もすべて一新すること
 ④既存仕上げとの取り合いに違和感がないこと
 この場合は、和室をただ洋室にするだけではなく、リビング全体として考えることが重要なのです。そうでないと、いかにも「つぎはぎの部屋」となってしまい、リフォームすることによってかえってデメリットになってしまうこともあります。
 また既存部分との取り合いは結構厄介なもので、例えば床ではカーペットとフローリング、壁や天井ではクロスとペンキといった異種の継ぎ目が出てきますので、デザイン的に見切りをつけることが必要になります。建築工事とは、設計者や施主が何も言わなければ業者の独断に任せることとなってしまいますから、工事前に業者とよく確認しておいたほうがよいでしょう。
 さて肝心のコストはグレードによっても違ってきますが、和室と洋室の一体化だけで考えて、500万円から1000万円ほどと考えてよいでしょう。単純なリフォームでも意外とコストがかかってしまうのは、新築以上の困難があるからといえます。
 リフォームを実現するには、ハードとソフト両面の総合的な技術が必要となります。設計、施工の建築知識はもちろんのこと、管理組合やリフォーム業者との折衝や工事中の安全確保、近隣への対応など極めて多面的な仕事が要求されます。
 このようなことから建設省(現国土交通省)の指導の下、平成四年にリフォーム業務を一手に引き受ける「マンションリフォームマネージャー制度」が創設されました。主体の財団法人日本住宅リフォームセンターの資料によると、リフォームマネージャーの業務とは「主としてマンションの専有部分のリフォームについて、ユーザーのニーズ等を把握するとともに現状の調査を行ない、これに基づきマンション特有の制約条件に配慮したリフォーム内容の企画提案、ならびに工事の実施に際して管理組合、近隣住戸、工事施工業者およびユーザーに対する調整・指導・助言を行なうこと」とされています。
 この資格を持つ建築設計者も多いので、さらに専門的な相談にも乗ってくれるでしょう。
 リフォームとは単に住み手の気分転換だけではなく、建物の寿命を伸ばすことにもつながります。しかし、建物にとってはひとつ間違えれば命取りにもなる「大手術」であり、このことを踏まえたうえで、建物と共存する意識を持つことが大切です。