マンション防災計画
マンションにとって火災は地震とともに恐ろしい災害です。
高層建築物の火災の恐ろしさを映画にした「タワーリング・インフェルノ」をご覧になった方も多いと思いますが、映画の中での火災の原因は天災によるものではなく、手抜き電気工事から起こったショートによるものでした。オーナーサイドが指示した手抜き工事ですからそれは人災といえます。では実際のマンションの防火システムはどうなっているのでしょうか。
まずマンションでは火災が起きたとき二ヶ所の避難経路が確保されなければならない二方向避難が義務付けられています。その際、エレベーターは避難経路としては認められていません。地震や大規模な火災が起きたとき、エレベーターはストップするようにできているからです。
ここで言う避難経路とは防火区画された避難階段のことを指します。二ヶ所の避難階段の位置は厳密に決められています。例えば二つの階段はある程度離れていなければならず、隣り合っていては意味がありません。これは居室から避難階段までの距離をできるだけ短くする意図があり、「重複(ちょうふく)距離」といいます。
しかし、重複距離をクリアしていても防火区画された二ヶ所の避難階段を確保するのは、平面計画上かなり難しくなります。そのため、建築基準法は、ベランダを緊急避難場所として認め、「避難階段一つとベランダ」という緩和措置をとっています。
ベランダには、隣との隔壁を破ることにより水平方向の避難経路を確保し、さらにベランダ床に設置された非常用昇降機によって階下への避難も可能になっています。天井、壁は防火仕様が義務付けられていますから本来はマンションの防火計画は万全なはずなのです。
しかし、1989年東京の超高層マンションで起こった火災は、はしご車のはしごも届かず、消火活動は火災の起こったフロアにある送水管や消火栓を使うしかありませんでした。
このときマンション住民を救ったのが防火区画でした。防火区画により延焼を免れ、110平米を焼いただけで鎮火されました。しかし、防火区画がうまく機能したとは言っても、このとき実は防火ドアが作動したにもかかわらず、上階にまで煙が広がっていました。被害は最小限に抑えられましたが、防火区画そのものにも考える余地がありそうです。
実を言えば、防火区画システムが万全であるにもかかわらず、その機能が発揮されずに大惨事に到ってしまうケースが多いのです。最も多いのは障害物によって防火ドアが閉まらないケースです。防火ドアは熱感や煙感といった感知器と連動して火災時の熱や煙を感知して自動で閉じる仕組みになっていますが、その際に観葉植物や家具、床置きの消火器などに妨害されて正常に作動しないのです。
マンション購入時にはどのような防火計画になっているかを確認することは大切ですが、それ以上にその防火システムが完全に機能するかどうかの運営面でのチェックのほうが重要であるといえます。さらに防火システムを使う住民の認識の問題もありますし、避難経路がちゃんと頭に入っていて火災が起こったときに実際その通りの経路で避難できるか、などといった訓練も必要です。
つまり、本来建物に備わっている防火機能やスペックを居住者がどれだけ引き出し、またどれだけ使いこなせるかが最大の課題となるでしょう。