配管を納めたシャフトの予備スペース

新聞の広告チラシの間取りの中に「MB」「PS」「DS」「AD」などという文字が見られます。チラシの中で説明されていることもほとんどなく、素人にはさっぱり分かりません。しかしこれはマンションの設計上、極めて重量な部分です。
 MB(メーターボックス)・・・各住戸の電気量を示すメーターが設置されている箱
 PS(パイプシャフト)・・・洗面台などの配管は納められている縦シャフト(水槽からの給水管、トイレなどの配水管を通しているものなどもあります)
 DS(ダクトスペース)/AD(エアダクト)・・・セントラルヒーティングなどで空気調和室から各住戸への冷暖房や加湿の空気を送り込むためのシャフト
 マンション建築の特殊性は、各住戸ごとに設備を可能な限り独立させる、という原則があります。例えばある住戸に水漏れなどのトラブルが発生したときに補修やメンテナンスを行なう場合、隣家や階下の住宅まで迷惑をかけられません。トラブルの発生した住戸にのみ入って作業することが鉄則です。
 したがって、設計者は住戸の独立性についてかなり神経質になります。
 しかし、どうしても建物を縦につなぐ上記に挙げたシャフト類が必要になってきます。チラシの間取り図を見ると、あちこちに小さくシャフトが書かれています。設計者はできるだけシャフトの面積を少なくし、居室を拡げようと苦心しているのです。
 ところが、最近になって建築関係者の間でこれらのシャフトの重要度がさらに増してきたようです。 将来対応のために、縦シャフトを有効に使うべきだという議論です。
 このところケーブルテレビや衛星放送の多チャンネル化などの生活のマルチメディア化が急速に進行している上に、今後どのようなメディアが誕生し、それに対して建築はどのような対応を必要とするのか全く分かっていないのが現状だからです。
 例を挙げると病院では、高機能の医療器具や数多くの配管、ダクトに建物が対応しきれず、廊下や病室の天井などに、配管やケーブルがまるで長い蛇のようにのたうっている光景をよく見かけます。古い病院建築では、ここまで発達した医療器具に対応しきれないのです。しかし人の命をあずかる施設ですから、見栄えよりも機能を優先すべきでしょう。
 しかし、マンションではそういうわけにはいきません。共用ホールや廊下にダラリと配線が垂れ下がっているのを見たら、誰もその物件を買いたいとは思いません。
 したがって、初めから将来の予期せぬケーブルに備えておかなければならなくなります。そしてその有効なスペースは、建物を上下階でつないでいる縦シャフトしかありません。このため、本来できるだけ省スペースで設計されてきた縦シャフトに余裕を持たせるケースが増えてきています。
 今後、マンションのコンピューター化が急速に進むことになるでしょう。マンションの一室にコンピュータールームをつくり、縦シャフトを通して全住戸と光ファイバーケーブルでつなげば、大容量で超スピートのアクセスが可能になります。
 インフラ(都市基盤)事業では、光ファイバーの埋設が進んでいますが、道路下からマンションへと引き込む光ファイバーケーブルは建物の縦シャフトを通す必要があります。その際、どれだけシャフト内に予備スペースがあるかが問題となってきます。
 現状のみを考えるのではなく、将来をある程度想定して、事前チェックをしておいてください。