外断熱のメリットやデメリット

外断熱工法が注目を集めるようになってから外断熱または内断熱のどちらがよいのかという論争が起こっていますが、断熱効果の優劣は建物の資産価値をも大きく左右する重要な要素となりますから購入者がより断熱効果の高い物件を要求するのも無理はありません。
 建物の断熱効果の低下により結露が生じ、人体に有害なカビの発生を助長することはよく知られていますが、それだけではなく設備費のランニングコストにも影響し、最終的には建物の寿命をも縮める結果にもつながります。
 このような不具合こそが断熱論議が過熱する理由といえるでしょう。
 一般的に外断熱工法は、木造住宅よりもコンクリート造のマンションに向いていると言われています。理由としてまず、コンクリートは木材に比べ、熱を内部に溜め込む素材(蓄熱体)になりやすく断熱効果が表れやすいこと、次に軀体と一体化しているバルコニーがほとんどのため、外気温が内部に伝わりやすいことなどが挙げられます。
 具体的な外断熱のメリット
 ①コンクリートの温度が室内の温度に近くなるため、結露を防ぎやすい
 ②コンクリートの温度の変化が少ないため室温が安定する(省エネ効果)
 ③内装の自由度が増える(RC打ち放し仕上げ等)
 ④コンクリート軀体の外側を断熱材で包むため、建物に対する外気の影響が少なくなり建物の寿命が長くなる
 ⑤建物自体の資産価値が上がる
 以上のように外断熱工法はメリットが多いように思われます。
 しかし、疑問も浮かびます。このようにメリットが多い外断熱工法をなぜ建設業界は長い間避け続け、内断熱工法ばかりを採用してきたのでしょうか。
 それは、外断熱工法は高度な技術レベルを必要とされるからです。
 まず第一に、外断熱工法では建物全体を断熱材で包まなくてはなりません。しかし、これは現実的に不可能です。突き出たバルコニーの外回りを完全に包むことは非常に困難ですし、さらにその上にタイルなどの仕上げ材の取り付けもあります。実際はバルコニーをできるだけ本体から切り離すのでブリッジ等でつなぐ手法が採用されていますが、これは抜本的な解決法とは言えません。また、サッシや「ドア等の取り付けも困難ですし、建物自体の断熱性能も高度なものでないと、壁を外断熱にしても意味がなくなってしまいます。
 こうしてみるとあることに気づきます。
 外断熱マンションは非常にグレードの高い物件でしかその効果を発揮できないのです。
 設計者のアイデアとシステム化された工法、そして施工業者の高度な技術が一体となったときにのみ成立する理想の工法といえるでしょう。
 例えば、室内の壁や天井はコンクリート打ち放し仕上げとし、床は大理石とするような高級物件は億ション、もしくはそれに近い価格になるはずです。
 つまり「安くてよい建築は存在しない」ということです。
 最近はびこっている「低価格外断熱マンション」には疑いの目を向けるべきです。
 何より恐ろしいのは、コスト削減のために失敗した外断熱マンションです。
 外側タイルは断熱材とともに剥がれ落ち、その瞬間に断熱層を失った軀体は大量の結露によりびしょ濡れになり、建物全体が「カビマンション」と化します。その時点で軀体内部の鉄筋が錆び始め、耐震強度までもが低下する結果となります。
 外断熱工法は非常なシビアな工法であり、標準的な技術しか持たない設計者・施工業者ではとても実現できるものではなく、ましてや利益のとれるような工法ではありません。
 マンション購入者は「外断熱」の言葉に惑わされず、しっかり造られた建物であるかどうかを確認してください。「億ションを買ったら実は外断熱だった」くらいのほうが正しい認識ではないでしょうか。
 建築は個別具体的に造られるべきであり、「外断熱」という理論だけが現在の論争で一人歩きしているともいえるでしょう。