共用部分に注目
マンション建築では、特に共用部分を見落としがちになります。買う側としては「自分の部屋がどうか」ということばかり考えてしまいます。モデルルームも共用部分まで造ってあるケースはほとんどありません。モデルルームを見学する場合は、「何が表現されているか」ではなく、「表現されていない部分はどうなのか」という視点から見ることが重要です。
このような方法で共用部分を見る目を養うことは、マンションのグレードを推し量るのに必要な要素となってきます。「共用部分は粗末だが、専有部分は立派」ということはあり得ますが、その逆は決してないからです。したがって、共用部分がしっかり造られているマンションはその他の部分もきちんと設計施工がなされているはずです。
買う側としては「共用部分にもお金を払っている」といった認識が必要です。実際、マンションの大規模修繕は新築から7~10年目には行わなければならず、その工事費用はたいていは居住者の毎月の積立金からから支払われます。マンションを購入する前には、大規模修繕計画についても確認しておいたほうがよいでしょう。
バブル期には豪華なエントランスホールを備えたマンション物件が多数造られましたが、バブル崩壊後の不況下にはその反動からか全く見るに耐えない物件まで出回りました。しかし、その後さらに不況が進み、「これでは全く売り物にならない」との販売業者の判断が作用し、共用部分にも様々なアイデアが用いられるようになりました。
かといって、バブル期のような豪華ホールを造っては採算が合わないので、今後の動向を象徴するような「ゆとり追求型」のマンションが登場してきました。
その特色は「一点豪華主義」ではなく、「共用」の概念をさらに拡大するところにあるといえるでしょう。
最近、ランドスケープデザインが他の建築意匠から独立してきたこともあり、プロムナードなどのランドスケープに力を入れた敷地面積の広い郊外の大規模マンションが出まわるようになりました。依然として、意匠設計者がイニシアティブをとるケースが多いのですが、専門の設計者というよりもアーティスト的な設計者が日本でも育ってきています。ユニークなデザインの庭園が出現していますが、これらはどれもローコストであるということが共通点といえるのではないでしょうか。
「キッチンハウス」「アトリエハウス」などと呼ばれる共用施設を独立させて設けている物件も出ています。
キッチンハウスとは、ちょっとした宴会やパーティーができるような設備とスペースがあり、居住者内の「キッチンスクール」なども催すことができます。アトリエハウスは、絵画教室など様々なカルチャースクールが用意され、手軽に利用できると好評です。これらの共用施設はどれもファミリータイプのマンション物件に多く見られます。
これらは大規模物件の利点でしたが、最近では中規模マンションもこれまでの部屋数優先主義ではなく、予備室といったかたちでカルチャースクールなどの様々な試みがなされてきています。
最近特に目立つのは、コミュニティープラザのような空間をマンション内に持ち込んだ例です。
これはエントランスホールとは別に、居住者が気軽に談話などができるスペースを各フロアに設けているもので、たいていは廊下の延長や一部分を利用して設けられており、ティーサービスなどの設備が付いている場合もあります。
これは、オフィスビルのリラックススペースと病院や老人ホームなどのデイルームを組み合わせたような空間といえるでしょう。
これまでのマンション族は隣人と会話したこともないなど徹底した個人主義の居住者がほとんどでしたが、こうした共用部分の充実によりマンションを一つのコミュニティーとしてとらえることができる時代になってきたといえます。
談話スペースは実は阪神大震災後の神戸で流行しつつあるのです。震災の教訓が活かされ、避難経路も充実したものになっています。共用スペース自体が仮の避難場所として機能することにもなります。さらに神戸では震災後にマンション住民が団結する機運が生まれたと言われています。
こうした住民どうしのコミュニケーションがなければ、どんな立派な共用施設も意味がなくなってしまいます。つまり、住民自らがマンションのグレードを決定することになるといえるでしょう。